枯渇性エネルギーとは

石炭や石油は,今から数百万年前,数千万年,数億年前に植物や動物の遺骸がとても長い年月をかけて地下の熱と圧力によって変質したものです。

大昔の植物も,太陽のエネルギーを使って光合成をしていました。

動物は,その植物を食べたり,植物を食べた動物を食べていました。

ですから,石炭や石油も,結局は,かつて地球に降り注いだ太陽エネルギーを長い時間をかけて蓄えたものです。

言い換えると,石炭や石油は地球のエネルギー貯金のようなものといえます。

しかも,このエネルギー貯金は,数百万年前,数千万年,数億年の時間をかけないと,蓄えることができません。

貯金は貯めないで,使っていれば,いつかなくなります。

このように,石炭,石油や天然ガスは,いつかなくなるエネルギーであるため,枯渇性エネルギー(あるいは,化石エネルギー,非再生可能エネルギー)と呼ばれています。

 

ところで,世界の巨大油田は1964年に最も多く発見されました。

以降,小さな油田しか見つかっていません。

このような事実を背景に,「ピーク・オイル」という考え方があります。

「ピーク・オイル」とは,油田の発見は1960年代をピークに減少の一途をたどり,後を追うように石油生産量もピークを迎えるというものです。

確かに,世界の全石油生産量の8割以上は,1960年代までに発見された約120の巨大油田に依存し,最近そのような巨大油田の発見はありません。

M. K. ハバートが,1956年に最初に指摘したこの「ピーク・オイル」は,現実味を帯び始めたといわれています。

底をつくまでの時間がカウントダウンできるような,貯金残高になってしまったということです。

 

再生可能エネルギー(自然エネルギー)が頼り

今まで使っていた(といっても,たかが23百年前からですが)石炭や石油のような枯渇性エネルギーがなくなるということなると,使うとなくなるようなエネルギーではなく,使っても減らないエネルギーを利用するほかありません。

そのようなものがあるのでしょうか?・・・あるのです。

枯渇生エネルギーも,元々は太陽エネルギーでした。

ですから,太陽エネルギーを蓄えないで使うことができれば,太陽が空にある限りエネルギーを使うことができるはずです。

地球に降り注ぐ太陽エネルギーは,過去も,今も,未来も,地球の表層で様々なものや現象に変えられています。

たとえば,光合成により植物が取り込みます(バイオマス)。

太陽の熱は,大気や陸海を暖め,空気を入れ換えたり(風力),水を水蒸気にして高いところにあげて雨や雪を降らせたり(水力),海水の流れをつくったりします。

空気の流れである風は,波も起こします(波力)。

様々なものや現象に形を変えた太陽エネルギーは,繰り返し繰り返し使うことができるエネルギーです。

このような繰り返し使えるエネルギーのことを「再生可能エネルギー」といいます。太陽エネルギー以外の再生可能エネルギーもあります。火山噴火や地震は地球が繰り返し発するエネルギーで,地熱も地球由来のエネルギーです。

潮の満ち干(潮力)は,月などの引力によるものです。これらも,繰り返し使うことができるので,再生可能エネルギーです。

このように多くの再生可能エネルギーは,自然の現象や物質に直結しています。

そのため,再生可能エネルギーは,自然エネルギーと呼ばれることも少なくありません。

石油や石炭などの枯渇性エネルギーは,大昔の動植物の遺骸から形成された炭化水素を燃やして使うため,使えば使うほど蓄えていた炭素を二酸化炭素(CO2)として大気中に多く放出することになります。

これが,大気中の温室効果ガス増加による地球温暖化問題の根本的な原因です。

対して,再生可能エネルギーの多くは,風の力がCO2と無関係なように,温室効果ガスを排出しません。

バイオマスは燃えてCO2を放出しますが,元々大気中のCO2を取り込んで生成されるので,燃やしてもCO2の収支はプラスマイナス「0」です(カーボンニュートラル)。

したがって,枯渇性エネルギーを再生可能エネルギーで代替することは,地球温暖化対策でもあるわけです。

 

再生可能エネルギー,省エネルギーと持続的社会

繰り返し使えるのであれば,再生可能エネルギーは際限なく使えるのでしょうか。

1年間の全世界のエネルギー消費量は,石油換算で100t強です。

このエネルギー量は約100kWh1014 kWh)に相当し,地球に降り注ぐ太陽エネルギー100kWh1018 kWh)の約1万分の1です。ですから,仮に太陽エネルギーの1万分の10.01%)を利用できれば,枯渇性エネルギーに頼らないで社会を維持することができます。

しかし,最近の40年間で世界のエネルギー消費は3倍になっています。

同じ調子で増加すれば,次の100年で10倍を簡単に越えます。

100年後には太陽エネルギーの11000を使わなければならなくないということになるかもしれません。

現在の中国やインドのように年間の経済成長率が10%を超えている社会では,24年で10倍、49年で100倍、73年で1000倍を超えることになります。

2050年に90億を超えるという人口増加も,エネルギー消費を増加させるに違いありません。

 

太陽エネルギーは,大気の動き,水循環,海流,植物の成長(一次生産)などを通して,地表の環境やすべての生き物の生存を支えているので,人間だけで使ってしまうわけにはいきません。

ですから,太陽エネルギーが一万倍あるからといって,再生可能エネルギーを無暗矢鱈に使うことは許されません。

世界のエネルギー消費が今の10倍になって,それをすべて太陽エネルギーで賄うとしたら,つまり太陽エネルギーの0.1%を人間が使うとしたら,予測はできませんが,地表の環境は大異変を起こしかねません。

1%10%となったら,とんでもないことになる可能性が高いといえるでしょう。

再生可能エネルギーを使うとしても,わたしたちは今くらいのエネルギー消費を限度とわきまえた方がよさそうです。

 

人口増や途上国の経済成長の中で,エネルギー消費を増加さないためには,エネルギーを効率よく使う省エネルギーの取り組みが不可欠です。

持続的な社会をつくるという点で,再生可能エネルギーによる枯渇性エネルギーの代替とともに,省エネルギーは大いに重視されなければなりません。

 

文責:いばらき自然エネルギーネットワーク代表 小林 久

 

NHKエコチャンネルより