株式会社開成
新エネルギー事業本部
須貝 卓也
キーワード
循環型農業・食品リサイクル・低炭素化社会・再生可能エネルギー・地域振興
課題 | 現地研修
「瀬波ループ」バイオマス施設の見学研修 (乾式メタン発酵・バイオガス発電・液肥利用による循環型農業の取組・寒冷地における南国フルーツ栽培) |
タイトル | 「バイオガス発電を利用した循環型農業(社会)システム」 |
日時 | 11月14日(月)14:00~16:00 |
会場 | 瀬波バイオマスエネルギープラント & 瀬波南国フルーツ園 |
概要 | 循環型社会形成への取り組み |
参考書&
参考WEBサイト |
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備考 |
Contents
1.事業概要
(1)事業主体
- 株式会社 開 成:バイオマス施設運営管理
- カイセイ農研株式会社:農産物生産加工、卸販売
(2)導入経緯
米穀類の加工販売を主な事業として1999年6月 株式会社開成 を設立。
米穀類は予てより自主生産であり、2007年4月 カイセイ農研株式会社(農業生産法人) を設立することで栽培管理を一元化、また、生産から加工・販売までを手掛ける六次産業化へと事業を展開する。
農業を主体とする事業運営を行う上で、これまでの慣習や農政に対し忠実でいることだけでは次世代に残るような産業に発展していかないと考え、慣行農業の枠組にとらわれない幅広い視点で新たなビジネスモデルを模索するようになる。
その結果、一見異業種ともいえるバイオマス事業こそが、農業をより強くより良くなれる可能性を見出せることに着目し事業参入に着手、2012年5月より「瀬波バイオマスエネルギープラント」が本格稼働した。
農業従事者にとっての収入源は生産された農産物の販売益となるが、天候不順や需給変動、為替相場等によって収益に大きな差が生じる。これでは毎年同様の労力であっても安定的な収益予測が掴めないことに繋がり、農業界全体における担い手不足問題や耕作放棄地の拡大に起因するところといわれている。
農業を基軸とするバイオマス事業参入において、当社で得られる最大のメリットは、新たな収入源の確保と農業生産における栽培コストの削減である。
バイオマス施設を運営することで、バイオマス原料の処理受託収入やバイオガス発電による売電収入、発電排熱の農業利用、バイオマス消化液は管理農地へ施肥することで肥料購入費が削減され、農業とバイオマス事業を連動させるビジネスモデルを構築することができた。
また、バイオマス事業の普及促進に取り組むため施設の導入支援や運営指導等を行っており、導入効果として地域社会に寄与できる産業構造を目指し、循環型社会の形成に農業がその一旦を担えることを目的としている。
(3)原料調達
バイオマス原料としては、地域未利用資源である食品系の動植物性残渣が対象である。
発生源である地元温泉旅館協同組合との協業で取り組みを始め、ホテルや旅館ではこれまで可燃廃棄物と一括りに纏められていた生ごみ(食べ残し・厨芥くず・廃棄食材)の資源分別を実施、当社は既存の収集運搬事業者が回収する可燃廃棄物とは別に、分別された動植物性残渣のみを回収できるようにした。
現在では、地域内の飲食店や介護施設、生鮮スーパーや学校給食より分別された動植物性残渣を回収するほか、食品工場からの製造ロスや有機性汚泥等も受け入れている。
受入を行うバイオマスプラントでは、メタン発酵技術によって資源を分解処理し、発酵過程で創出されるバイオガスはエネルギーへ転換、発酵後の消化液は有機性肥料として全量農地へ還元し農作物を生産することができるため、農業を中心とした「食」のリサイクルが成立する。
(4)農産物生産
水稲栽培が主体であり、飯米等の主食用米と酒米等の加工用米を生産している。
少人数でも広範囲の農地を耕作できるよう作期分散することにより作業効率が増し、品種毎の刈り遅れもなく適期収穫が可能となり品質向上に繋がった。
また、直播栽培(水田に直接種を播く)を用いることで育苗コストが低減し、晩生品種の作付面積も増やすことで収穫期間が大幅に拡大した。
管理圃場には借地や作業受託も多い。これは近隣農家の担い手不足に起因するところで、高齢に伴い離農する方が増加傾向にあるため、当方の管理圃場は年々拡大しており地域農業を担っている構図ともいえる。
さらに、バイオマス事業への参入を契機として、バイオガス発電で得られる温熱は隣接する園芸ハウスの熱源に用いて熱帯果樹を栽培、バイオマス消化液は有機性肥料となるため、水稲栽培や果樹栽培へ施肥することで肥料購入費を削減することにも繋がった。
2.施設概要
施設の種類 | 乾式メタン発酵処理施設 |
施設名称 | 瀬波バイオマスエネルギープラント |
施設の構造 | 投入室:S造,発酵槽:RC造,ポンプ室:W造 |
設置場所 | 新潟県村上市瀬波温泉一丁目1175番113 |
条例制限 | 新潟県立自然公園条例 特別地域 |
敷地面積 | 1,625.44㎡(約492坪) |
処理能力 | 4.9t/日(24時間) |
処理方式 | 乾式メタン発酵 |
処理工程 | 前処理 →発酵槽→消化液槽→農地還元(下図参照) |
発酵方式 | 浮遊生物法 |
発酵温度 | 中温域(40℃前後) |
攪拌方式 | 横軸パドル式攪拌機 |
取得許認可 | 産業廃棄物処分業許可[新潟県01521165815]
産業廃棄物収集運搬業許可[新潟県01501165815] 一般廃棄物処理業許可[村上市 H28処分第5号] 再生可能エネルギー発電設備認定[M883342C15] 再生利用事業計画(食品リサイクル・ループ)認定 |
表彰受賞歴 | 2012年 新潟県優良リサイクル事業所表彰
2013年 グリーン購入大賞 大賞・農林水産大臣賞 |
3.事業の特徴
全国から年間約1,000名の産業視察を受け入れており、視察者のなかには当方のモデルを採用しバイオマスプラント事業への参入を検討する方が多く見受けられる。
当社としては、意欲の高い事業者に対して導入支援や運営管理のノウハウ提供を行うことで、国内に多くのバイオマスプラントが建設されることを望んでいる。
地域資源についてはその土地に合わせ多種多様であり、畜産農家や外食産業、食品製造工場や地域コミュニティ等、各所廃棄物処理に対しては少なからず問題を抱えている状況なので、事業者と連携し各地で根付くバイオマスエネルギープラントの事業計画が最も重要となる。
より低価格であり、且つ高効率・高濃度のメタン発酵システムが構築できるよう技術革新に努めている。
4.事業効果
(1)直接的効果
村上市内で完結する循環型農業は、村上市に対しては財政支出の削減・CO2排出抑制効果・地元雇用の創出、瀬波温泉旅館協同組合に対しては食品循環資源の再生利用、産業視察や観光資源化に伴っての集客効果等、見出せる効果は多岐にわたる。
本事業の取り組みは単一商品のリサイクル業とは異なり、事業に関わる全ての方が過度な負担を強いられることなくリサイクル・省資源・環境保全・農業振興・地域活性に貢献できており地域社会全体の再生事業ともいえる。
(2)間接(波及)的効果
日本国内で多くの地域が抱えている課題に“環境悪化(廃棄物の増大)、地方の過疎化、一次産業の衰退、雇用機会の減少”等が挙げられるが、このバイオマス事業を継続的に取り組むことで好転・改善できる可能性がある。
且つ国が推奨する“地球温暖化防止措置、資源の有効活用、化石燃料依存からの脱却、新エネルギーへの移行“等にも貢献ができる環境調和型産業となる。
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