経済産業省 関東経済産業局
資源エネルギー環境部
地域エネルギー振興室 調査官 村瀬 一世
キーワード
国のエネルギー政策、再生可能エネルギーの固定価格買取制度
課題 | 再生可能エネルギーの現状と政策 |
タイトル | 国のエネルギー政策と現状 |
日時 | 10月 3日(火)14:45~15:40 |
会場 | 茨城大学水戸キャンパス 図書館3階 ライブラリーホール |
概要 | 本講義では、エネルギー白書で示したエネルギーを巡る状況とエネルギー政策の新たな展開、再生可能エネルギー導入の状況、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の改正内容に関する基礎知識等、我が国のエネルギー政策の動向について関連知識を習得することができる。 |
参考書&
参考WEBサイト |
エネルギー白書2017 http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2017html/
再生可能エネルギーの固定価格買取制度 http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_faq.html
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備考 | 特になし。 |
Contents
国のエネルギー政策について
2014年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」及び2015年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」の実現に向けて、徹底した省エネルギー(以下「省エネ」という。)の推進、再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)の最大限の導入と国民負担抑制の両立、火力発電の高効率化、安全性の確認された原発の再稼働などを進めていくこととしている。
省エネについては、年1.7%の経済成長を前提に、2012年度から2030年度までの約20年間に、エネルギー消費効率(=最終エネルギー消費量/実質GDP)を35%程度改善することを見込んでいる。そのため、省エネポテンシャルを最大限深堀りするため、事業者単位で自発的に省エネへの取組が進むための事業者のインセンティブの強化、事業者単位を超えて複数事業者が連携した省エネへの取組の促進、省エネノウハウを有する民間企業の省エネビジネスを活用した省エネ等、徹底した省エネと経済成長の両立が必要である。
再エネは、資源の乏しい我が国のエネルギー自給率の向上や化石燃料輸入の削減に寄与し、温室効果ガスを排出しないエネルギー源であり、その役割は非常に重要です。固定価格買取制度の見直しをはじめ、系統整備や系統運用ルールの整備、発電設備の高効率化・低コスト化や系統運用の高度化等に向けた技術開発などが必要である。
「エネルギー革新戦略」
東日本大震災以降、我が国のエネルギー政策は大きく見直され、2015年7月には、安全性の確保を大前提としつつ、安定供給、経済合理性、環境適合に関する具体的な政策目標を同時に達成するための「エネルギーミックス」が策定され、徹底した省エネや再生可能エネルギーの最大限の導入(2030年度における再エネ比率は22~24%程度)等、数値的な目標が設定されたところ。
こうした目標を達成するためには、市場任せではなく、総合的な政策措置が不可欠として、2016年4月には、関連制度の一体的な整備を行うための「エネルギー革新戦略」が策定された。同戦略の狙いや具体的な政策内容は以下のとおり。
(1)エネルギー革新戦略の狙い
①.エネルギーシステム改革の実行とエネルギーミックスの実現を通じて、
エネルギー投資を拡大
②.エネルギー投資の拡大により、成長戦略の目標であるGDP600兆円
達成の一翼を担う
③.エネルギー投資の拡大は、エネルギー効率を向上させ、CO2排出抑制
にも貢献
(2)エネルギー革新戦略における具体的政策措置
①.徹底した省エネ
<産業>
○産業トップランナー制度を流通・サービス業に導入し、今後3年で全産
業の7割に拡大
○中小企業の省エネ支援(設備投資、相談窓口)
<住宅>
○新築の過半数をZEH化(2020年まで)。蓄電池を活用した既築
ZEH改修も検討
○リフォーム市場活性化の中で、省エネリフォームを倍増(2020年まで)
○白熱灯を含む照明機器のトップランナー化
<運輸>
○次世代自動車の初期需要創出、自動走行の実現等
<国民運動>
○関係省庁一丸となった省エネ国民運動の抜本強化
②.再生可能エネルギーの導入拡大
<FIT法の改正>
○コスト効率的、リードタイムの長い電源の導入を拡大
○FIT電気の買取後は原則として市場取引を行う
<系統制約解消>
○計画的な広域系統や運用ルールを整備
<規制改革>
○環境アセスメント手続き期間の半減
<研究開発>
○世界最大の7MW浮体式洋上風力の運転開始(2015年12月)
<各府省庁連携プロジェクト>
○再エネ閣僚会議(2016年3月)を受け、各府省庁連携プロジェクト
を推進
③.新たなエネルギーシステムの構築
○電力分野の新規参入とCO2排出抑制の両立
○再エネ・省エネ融合型エネルギーシステムの立ち上げ
○地産地消型エネルギーシステムの構築(地域資源や熱の有効利用、高度
なエネルギーマネジメント等の地域の先導的な取組を支援。特に、自治
体主導プロジェクトを関係省庁連携で重点支援)
エネルギー革新戦略の実行によって、エネルギー投資を促し、エネルギー効率を大きく改善することで、強い経済とCO2の排出抑制の両立を目指す。
また、革新戦略による新たな展開として、IoTを活用したエネルギー産業の革新や、ポスト2030年に向けた水素社会戦略の構築等に期待がかけられれている。
さらに、エネルギー革新戦略では、未来の新エネ社会を先取りするモデル拠点を創出すべく「福島新エネ社会構想」の実現が掲げられており、2020年には、①再生可能エネルギーから燃料電池自動車1万台相当の水素製造し、②福島県内のみならず、東京オリンピック・パラリンピックでの水素活用を目指すなど、水素・燃料電池社会の実現に向けた取組が進められている。
「経済と環境の両立」
①徹底した省エネと経済成長の両立
②国民負担を踏まえた再生エネルギーの効率的な導入
③ネガワット取引市場とVPPの構築に向けた取組
④水素社会の実現に向けた取組
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)について
エネルギーミックスにおける2030年度の再生可能エネルギーの導入水準を達成するため、固定価格買取制度等の見直しが必要とされている(※2014年度の再エネ比率は12.2%(水力9.0%、太陽光・風力・地熱・バイオマス等3.2%)。
制度の改正に当たっては、以下の点を踏まえ、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担抑制の両立を目指す。
<見直しの目的>
○エネルギーミックスを踏まえた、電源間でのバランスの取れた再生可能エ
ネルギーの導入を促進(FIT認定量の約9割が事業用太陽光)。
○国民負担の抑制のため、コスト効率的な導入を促進(買取費用が約1.8
兆円に到達。エネルギーミックスでは、2030年のFIT(再エネ)買
取費用は3.7~4兆円となる見通し)。
○電力システム改革の成果を活かした効率的な電力の取引や流通を実現。
<見直しのポイント>
(1)未稼働案件の発生を踏まえた新しい認定制度の創設
○発電事業の実施可能性(例えば、系統への接続契約締結を要件化)を確認
した上で認定する新たな制度を創設。
○既存の認定案件(平成29年3月31日までに既に接続契約締結済み
(発電開始済みを含む))については、4月1日以降、新認定制度による
認定を受けたものとみなす。
(2)適切な事業実施を確保する仕組みの導入
○新制度では、事業開始前の審査に加え、事業実施中の点検・保守や、事業
終了後の設備撤去等の遵守を求め、違反時の改善命令・認定取消を可能と
する。
○景観や安全上のトラブルが発生している状況に鑑み、事業者の認定情報を
公表する仕組みを設ける。
(3)コスト効率的な導入
○中長期的な買取価格の目標を設定し、予見可能性を高める。
○事業者間の競争を通じた買取価格低減を実現するための入札制を導入(事
業用太陽光を対象とした大規模案件から実施)。
○数年先の認定案件の買取価格まで予め提示することを可能とする(住宅用
太陽光や風力は、価格低減のスケジュールを示す。
○賦課金8割減免は、電力多消費事業の省エネの取組の確認、国際競争力強
化の制度趣旨の徹底や、省エネの取組状況等に応じた減免率の設定を可能
とする。
(4)地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大
○数年先の認定案件の買取価格まで予め提示することを可能とする(地熱・
風力・中小水力・バイオマスといったリードタイムの長い電源について、
発電事業者の参入を促す)。
(5)電力システム改革を活かした導入拡大
○再生可能エネルギー電気の買取義務者を、小売電気事業者等から一般送配電事業者等に変更する。これにより電力の広域融通をより円滑化し、より多くの再生可能エネルギーの導入を可能とする。
○市場経由以外にも、小売電気事業者等への直接引渡しも可能とする。
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