一般社団法人日本有機資源協会
事務局 次長 菅原 良
キーワード
メタン発酵・バイオガス・バイオマス・バイオマス産業都市・FIT
課題 | メタン発酵・バイオマス利用技術Ⅰ― メタン発酵技術と全国の事例 |
タイトル | 「メタン発酵技術と全国の事例」 |
日時 | 10月27日(木)13:10~15:10 |
会場 | 茨城大学水戸キャンパス 図書館3階 セミナールーム |
概要 |
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参考書&
参考WEBサイト |
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/index.html
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/
http://www.jora.jp/tiikibiomas_sangyokasien/index.html
地域エネルギーユニット 資源循環システム担当成果(平成13~27年度) http://www.naro.affrc.go.jp/nire/introduction/chart/0601/index.html#rink2 |
備考 |
Contents
1.メタン発酵概論
(1)バイオマス活用の意義
バイオマスは、バイオマス活用推進基本法(2009年)で「動植物に由来する有機物である資源」と定義されているように、古来、人間の生活(衣食住)に欠かせない国内生産が可能な貴重な資源であり、太陽エネルギーと二酸化炭素を利用する生物の光合成により再生可能(カーボンニュートラル)であることから、地球温暖化防止対策としても有効な再生可能エネルギーの一つとして活用が進められている。ただし、バイオマスの循環は太陽光と二酸化炭素だけでは成立せず、土壌や水を媒介として植物により行われることが基本であり、その生長には窒素や、国内利用のほぼ全量を輸入に依存しているリン(リン酸)、カリウム等の肥効成分が必須である。
(2)メタン発酵の技術的特徴
メタン発酵は、多種の嫌気性微生物(複合微生物系)の分解作用によって、バイオマス(有機物)から最終的にメタン(CH4)が生成される反応の総称であり、以下のような特徴を有する。
1)①可溶化・加水分解、②酸発酵(酸生成細菌)、③水素・酢酸生成((共生)酢酸生成細菌)、④メタン生成(メタン生成古細菌)の4段階の逐次反応群で構成。
2)原料の元素組成(C、H、N、O)の比率が分かれば、メタン生成量とメタン濃度が推測可能。
3)35℃付近の中温域と55℃付近の高温域の2つの最適温度帯があり、安定性では中温が優れ、分解性では高温が優れている。
4)加温が必要なため、低濃度の原料では回収されるメタンの熱量よりも、加温に必要な熱量が上回る場合がある。
5)有機物容積負荷量は好気性プロセスよりも5~10倍高く、高濃度の有機物処理に向いている。
6)菌体の増殖速度が低いため、十分な滞留時間が必要。
7)酸生成とメタン生成の速度バランスが重要であり、バランスが崩れると酸の蓄積等の問題が起きる。
8)原料によってアンモニアや油脂分による発酵阻害に注意が必要。
9)分解された有機物のうち、1割弱は菌体の増殖に使われるが、菌体の合成量(=余剰汚泥、消化液中の固形物)は好気性プロセスの5~20%であり、廃棄物処分コストが小さい。
10)余剰汚泥(消化液)は活性低下が少なく、数ヶ月〜数年間保存可能。(処理を停止しても再開できる。)
2.メタン発酵施設(考え方、維持管理、環境対策)
バイオガスプラントは、主に以下の設備で構成され、1.(2)の技術的特徴や4.の事業性、環境対策に留意して、規模、立地、機器選定、設計・施工、運転管理等を行う。
1)前処理設備(原料受入装置、前処理装置)
2)メタン発酵設備(メタン発酵槽、ガス貯留装置)
3)エネルギー利用設備(脱硫装置、シロキサン除去装置、発電装置、ボイラー)
4)液肥利用・処理設備(液肥貯留槽、散布装置、堆肥化装置)
5)環境対策設備(排水処理装置、脱臭装置)
3.バイオガスの利用
バイオガスの性状や発生量を想定して利用方法や効率的な設備を検討する必要があり、主な留意点は以下の通り。
1)バイオガス発生量は、家畜排せつ物や汚泥よりも生ごみからのガス発生量が多いなど、原料の組成により変化する。
2)硫化水素やシロキサンなどの不純物成分を、用途に応じて適切に除去(前処理)する必要がある。
3)利用方法に応じて安定供給するため、常圧、液化、圧縮、吸着等の貯蔵方法によるガス貯留設備を設置する。
4)エネルギー効率が良い熱利用方法であるボイラ(温水・蒸気)の他、燃料利用(都市ガス供給、車輌)、発電設備(ガスエンジン・燃料電池)等が実用化されている。
5)大気汚染防止法等の法令を遵守する。
4.バイオガス事業のポイント
持続的なバイオガス事業のためには、以下のような点に留意する必要がある。
1)立地、原料調達、エネルギー・製品利用に関する多様な地域関係者の合意形成。
2)廃棄物等の地域資源の有効利用による安定的な燃料確保・調達。
3)適正かつ安定した変換技術によるエネルギー化と利用先確保(特に熱利用)。
4)副産物・残さの利用による農畜産業振興(利用できない場合は適正処理)。
5.バイオガス事業の全国事例
し尿処理場・汚泥再生処理センター、下水処理場、食品工場(食品固形廃棄物、排水)、畜産農家等において、約600施設のバイオガスプラントが稼働している。
また、2012年7月に導入された再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度(FIT制度)においては、既存施設からの移行29施設(11.2MW)、新規稼働80施設(22.3MW)の合計109施設(33.5MW)が稼働している。稼働中の80施設を含む新規認定は174施設(61.3MW)あり、少しずつ増加している。(施設数と発電容量はいずれも2016年9月末時点。)
集約型の大規模バイオガスプラントは、北海道の鹿追町や別海町など畜産が盛んな地域に多い。福岡県大木町やFIT認定第1号の瀬波バイオマスエネルギープラント(新潟県村上市)では、地域の生ごみ等の食品廃棄物を原料としている。いずれの事例も、エネルギー利用だけでなく消化液を肥料として米、野菜、南国フルーツ等の栽培に有効利用することにより、消化液の処理・処分費の削減と地域の農業振興に寄与している。
汚泥再生処理センターや下水処理場では、生ごみ等の汚泥以外のバイオマスとの混合利用によりガス発生量を増加することで、エネルギー量の増加による維持管理費低減や温室効果ガス削減等の効果を発揮している。
6.参考・関連情報(メタン発酵に関する国の支援事業、研修制度、等)
(1)バイオマスの利活用にかかる主な施策
わが国のバイオマスに関する施策は、バイオマス・ニッポン総合戦略(2002年12月)、バイオマス活用推進基本法(2009年6月)、バイオマス活用推進基本計画(2010年12月)を経て、バイオマス事業化戦略(2012年9月)により「バイオマス産業都市構想」の策定と実現化が進められている。
また、2012年7月に導入された電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ法)に基づくFIT制度がバイオマス発電事業の採算性改善に寄与することから、メタン発酵ガス(バイオガス)発電施設も増加している。
農林水産省のホームページ
(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_sangyo_toshi/b_sangyo_toshi.html)では、バイオマス活用に係る計画策定・調査設計、施設整備、活動支援、研究開発の分類毎に施策支援例を紹介している。
(2)バイオガス化に関する参考資料・情報例
- メタン発酵(野池 達也 編著)
- バイオガス実用技術(浮田 良則 監訳)
- バイオマスエネルギー(横山 伸也・芋生 憲司 共著)
- バイオマスハンドブック((社)日本エネルギー学会)
- メタン発酵消化液の液肥利用マニュアル((社)地域資源循環技術センター)
- 家畜排せつ物を中心としたメタン発酵処理施設に関する手引き((財)畜産環境整備機構)
- メタン発酵利活用施設技術指針(案)((社)地域資源循環技術センター)
- 下水汚泥有効利用促進マニュアル((公社)日本下水道協会)
- 下水汚泥エネルギー化技術ガイドライン(案)(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000364.html
- バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第4版)(NEDO)
http://www.nedo.go.jp/library/pamphlets/ZZ_pamphlets_15_4shinene_biomass_guide.html
- (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門の資料
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/introduction/chart/0601/index.html#rink2
- メタン発酵消化液の輸送・散布計画の策定支援モデル(使用マニュアル)
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/soshiki/soshiki07-shigen/01shigen/methane_manual.html
http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/introduction/files/ekihiriyou.pdf
http://www.jora.jp/tiikibiomas_sangyokasien/index.html
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