(独)農業・食品産業技術総合研究機構

農村工学研究所

後藤 眞宏

 

講義は、「我が国の水力の概要」、「農業水利施設を利用した小水力発電」、「維持管理(除塵)」の3つの内容から構成されている。

まず、「我が国の水力の概要」では、流量と落差から算定する水力発電の出力(図1)、黒部第4発電所など水力発電の規模、戦後から2010年までの原子力・石炭等構成別の発電電力量の年変化、他の再生可能エネルギーとの比較による水力発電の特徴(出力が安定している、出力が制御できる、長期間稼働できるなど)、経済性の検討で重要な数値である設備利用率、kWとkWhの違いなどについて述べた。

「農業水利施設を利用した小水力発電」では、はじめに農業用水を送水するための農業水利システム、システムを構成するダム、頭首工、用水路など農業水利施設について述べた。次に、平成26年10月時点で農業農村整備事業等で建設された発電所が全国に37地区あり、農業水利施設を利用した様々な小水力発電施設について、施設別・発電規模別に特徴(図2)を述べた。これまで多くの地区ではかんがい用水に従属した発電であったが、非かんがい期に新たに発電用水利権を取得した新たな取り組みについて、さらに売電レベルに達しないものの直接利用や充電利用が可能な数kW以下の小型水力として農工研で開発された並進翼水車と開放クロスフロー水車などを紹介した。

「維持管理(除塵)」では、小水力発電施設の維持管理で多くの労力と費用を要する除塵について述べた。用水路のゴミの状況、海外の除塵装置、頭首工でのゴミ流入防止装置とその効果などである。さらに、水路に設置する除塵スクリーンの設置角度について、通常の45-60度と緩勾配の30度では溢水に至る時間が3-4倍異なること、通常の板状のバースクリーンよりもV型断面の方がゴミが水面に押し上げられゴミの掻き上げに有利である(図3)ことを述べた。

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図1 流量と落差から算定する水力発電の出力

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図2 農業農村整備で建設された発電所の特徴

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図3 緩勾配スクリーンの事例